タイムカードの思い出

最終更新日 2024年4月15日 by tradgard

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・「ガシャコン!」は働く大人の特権だった

時をさかのぼること30年以上前、今はドロドロに汚れきったオトナになってしまったワタクシにも無垢な少年時代がありました。
我が家は俗にいう共働き家庭というものでありまして、母親は託児所のある近所の大きな乳製品工場に勤めておりました。

この工場の託児所というのは工場の一角にありまして従業員らの通用口から子供たちも一緒に入場するつくりになっておりました。

この際に母親が入り口に備え付けられたタイムレコーダーにタイムカードを差し込む姿を毎度出入りの度に見ていたのですが、幼い自分には打刻をするたびに「ガシャコン!」と大きな金属音をさせるそのスティール製のボディに「大人の世界」を垣間見たわけでございます。

「自分もこころゆくまで『ガシャコン』をやってみたい」という衝動が当時はあったのですが、タイムレコーダーを前に眼をランランとさせる息子の様子に感づいたのか母親にはキツく「子供が触ってはイケないもの」と諭された記憶があります。

まぁ確かに出勤・退社を記録するタイムカードをイタズラされてはかないませんので、当然といえば当然のたしなめではありますよね。

タイムレコーダーにはそのような憧れがありまして、高校生になった際に近所のスーパーでアルバイトを始めた際に自身のタイムカードを渡されたときにはチョットオトナになったような誇らしさを感じたりしたものでした。

ところがこの頃にはタイムカードを打刻するタイムレコーダーはデジタル式の小型なモノにとってかわっておりました。
カードを差し込むと「ウイーン!」と唸りをあげて静かに打刻する現在よく見る形状になっておったのですよね。

自分の記憶にあったタイムレコーダーは出勤か退社かのセレクターも手動式の金具でありまして、これを動かすだけでも「ガシャン」と音がし、打刻機もそれはもう超合金製のロボットが立ち上がるかのようなイカツイ音がしたものでありました。

さらに時計部分はアナログとなっていたため、冷たいスティールのボディに耳をくっつければ「カチカチカチ」とクロックの音がしたのです。

まるでそれがテレビで見た時限爆弾かのような(そんな危険なものが会社にあるわけがありませんが)想像をしてドキドキハラハラしていたのですが、自身がはじめて使うタイムレコーダーはデジタライズされており、そうしたガジェットへの憧れ的要素は皆無なものに進化おり少々失望したわけでございます。

しかしタイムカードホルダーに他のオトナに混ざって自分の名前のカードが刺されている様子をみると「オレもここで働くんだ!オレももうオトナかな!」と心が躍った記憶があります。

こうした想いはおそらく自分だけではなく他の方にも同様の思い出があるのではないでしょうか?
そういう点ではタイムカードは「労働者」の象徴的なガジェットであることは今も昔も変わらないようです。